船戸邸 和歌山県海南市  鉄筋コンクリート造

    2010年1月号 住まいの設計 掲載

「この場所でワインを飲みながら海が見たいわ。」奥様のこの一言と、眼下に広がる海を見たときに一瞬で設計の方向が決まりました。プランも何も無い白紙の状況だったのですが、映画のワンシーンのように夕日が海に沈む眺めのリビングでお二人がワインを飲んでいられる情景がすぐにうかびました。
 計画の条件として出されたのは、眺望を生かすことと、来客が多くそれに柔軟に対応できるオープンなプランという程度であとは任されました。あと、住宅らしくない住宅をという希望もあり、建築家にとっては条件に縛られることなく自由に発想することができました。
 提案したのは いくつかのレベルの変化あるスキップフロアー方式と、日本家屋に引き継がれてきた建具による個室の確保です。スキップフロアーを採用することにより、さまざまな目線から海を見渡すことが可能になります。同じ和歌山県にある名所<千枚岩>からヒントを得ました。また1階に同居する犬たちとは半階だけ離れるだけで、気配を感じることが出来る程度のいい距離になります。上階の部屋割りは、寝室、来客用の個室2室、それと仏間です。常時はご夫婦二人で生活されるため、建具を引き込んだ広いワンルームの状態での生活を提案しました。階段に腰かけ見下ろす海、朝目覚めベッドから見下ろす海、仏間に座り障子越しに見る海。海を借景にさまざまなシーンが展開されます。浴室も海に向かってガラス張りオープンですが、お二人とも躊躇されることなく長時間入浴を楽しんでいられるとのことです。